永井酒造 株式会社様

ホソヤのお客様紹介 Vol.3

創業120余年
群馬県屈指の酒蔵

住所〒378-0115
群馬県利根郡川場村大字門前713
電話0278-52-2311
担当設備冷蔵空調設備工事、メンテナンス
URLhttp://www.mizubasho.jp/

川場村に120余年続く群馬県屈指の酒蔵、永井酒造株式会社様。
歴史をひもとくと、明治19年初代当主永井庄治氏が川場村の「水」と出会い、酒造りを決意したことから始まる酒蔵でいらっしゃいます。高度経済成長の波をうけ、2代目力造氏、3代目鶴二氏と繁栄を続けられ、大きな酒蔵へと発展されました。そんななか、この先先細りになるであろう業界の将来を見据えられた4代目彰一氏は、再出発を決意されたそうです。徹底的に品質にこだわった吟醸酒を造り、平成4年『水芭蕉』ブランドを立ち上げられました。契約した酒販店のみで販売するという新しい流通スタイルを実践し、現在の年商は5億8000万円にまで。めざましい成果をおさめられています。兄・彰一氏が4代目社長として経営全般を、弟・則吉氏が醸造場全般を取り仕切り、「何よりもいい酒造りを」と真摯に取り組んでいらっしゃいます。

直撃!!インタビュー
~醸造全てを管理しているという永井則吉工場長にお話を伺いました~

御社のこれまでの歩みをお聞かせください。

創業は明治19年。初代が川場村で出会った水を「仕込み水」に、120余年この地で酒造りを続けています。以前は2級酒を中心としていましたが、現在は吟醸作りが中心です。現在の4代目が「いいものを作ればそこに喜びがうまれる!」と「質」を追究することの大切さを改めて実感し、平成4年に「水芭蕉」ブランドを立ち上げました。その後、平成6年に新蔵を完成させ、徹底的にいい酒をつくる酒蔵を目指して再出発しました。

新蔵とは?

新蔵は吟醸造りに適した環境をつくりだす蔵です。私たちの蔵では100%社員が酒造りを行っています。新しい蔵では人と機械の棲み分けをハッキリさせ、「五感を駆使できる人間にしかできないことを徹底的に人がおこなう」仕組みを作りました。機械が並ぶ工場内を一見すると、すべて機械任せのように見えるかもしれません。しかし、新しい蔵になってから、社員たちは麹と接する時間が格段に増えました。

また新しい蔵ができることを機に、他社へも積極的に出掛け、研修させていただきました。そうしたことで社員の意識や技術も高まり、酒造りや蔵に対する愛着が深まったことが実感できます。

酒造りに対する思いをお聞かせください。

酒造りは小さな頃からみてきましたが、「自然の力を借りながら日本人が生みだした知恵を引き継いだ酒造り」に携われることは、何よりも喜びです。

日本酒は、日本の自然がもつ美しさを凝縮したものです。原料は80%をしめる水、残り20%が米ですが、それを酒にしてくれるのは、酵母菌と麹菌という2つの菌がもつ自然の力のおかげ。私たちの仕事は、彼らふたつの菌が一番住み易い状態を常につくってあげるだけのいわば「環境整備役」といってもいいでしょう。酒は常に生きているので、お客様の口に入るまで最高の状態でお届けすることが私たちの役割なのです。

麹のことを「彼ら」と呼ぶ工場長、酒造りに心から喜びを感じていらっしゃる熱い思いが伝わってきます。

商品をご紹介いただけますか?

現在は『水芭蕉』と『谷川岳』、2つのブランドが中心です。『水芭蕉』は柔らかくて優しい味が特徴の吟醸酒で、弊社で契約店のみで販売している限定流通商品です。数は限られますが、酒屋さんと情報を密にすることで、酒を倉庫で眠らせることなくお客様へお届けできるようにしました。一方、『谷川岳』は清らかなスッキリした味が特徴です。元々あったブランドを品質ありきに改良したオープン流通商品です。どちらも大自然からとった名前なので、その名が活きるような大自然を素直に表現できるテイストに仕上げたいと思っています。

昨年、新しい商品を発表したとお聞きしましたが。

ええ、『MIZUBASHO PURE』です。日本酒では珍しいシャンパンのようなきめ細やかな泡をもつ本格的な発泡性清酒です。ご縁あって交流をもつことができたフランスのワイン関係の方と一緒に、私たちがもつ酒造りの知恵とシャンパン地方の伝統ある製法をあわせ、スパークリングワインを彷彿させる清酒造りの試みを開始しました。数々の失敗を繰り返しながらも必ずできると信じて続けてきましたが、完成までには開発から5年の歳月を要しました。出来上がったときは自然と涙がこぼれましたね。

尾瀬の天然水と山田錦により造られた日本酒をシャンパーニュ製法と同じ方法で瓶内二次発酵させた、本格的な発泡性日本酒です。
試飲をさせていただきましたが、透明な日本酒にきめ細やかな泡立ちが美しく、口にふくむと、爽やかな発泡とドライな口当たりが広がります。フランス製ガラス瓶と金色のラベルも、シャンパンをイメージさせる美味しくて華やかなお酒でした。
昨年の東京国際映画祭のオフィシャルパーティの席で好評を博し、既に都内のホテルやレストラン、アメリカなど海外でも採用が決まっているとうかがいました。今春には都内でのプレス発表も予定されているそうです。

弊社についてもお伺いしたいのですが、現在2基の冷蔵庫をいれていただいております。施工について、また今後のご要望などありますか?

施工の際は、用途など細かな条件や要求を大いに反映していただきました。とても満足しています。この先気にかかるのは、やはり故障や停電などトラブル時の対応ですね。酒は生きているものなので、管理によっては一日でダメになることもあります。細谷工業さんはいつでも敏速かつ正確に処置していただけるので、安心できます。またメーカーとの信頼関係がしっかりしている様子もうかがえますし、価格面でのサービス、スタッフの責任ある対応もとても良いので、信頼してお任せしています。

弊社では平成21年より「10年保証」がスタートしました。地球温暖化を防ぐためにもガス漏れをさせないという考えが基本になっているシステムですが、環境についてはどのようにお考えですか?

酒造りは水が命です。現在、地元の青年会議所では「世界一美しい川をつくろう」という環境活動をおこなっています。そういう意味からも「森を育てて、森を綺麗にし、そこから生まれる水を綺麗にしよう」という試みを進めています。また工場のなかでも、自然エネルギーを利用して無駄をなくしていこうと、配管を断熱材で断熱するなどの工夫をしています。環境負荷が少なくて、クリエーションコストがかからないもの、今後の設備はふたつのバランスのとれたものを取り入れていきたいと思っています。

今後の抱負をお聞かせください。

永井酒造には、「3つのよろこび」というものがあります。「米を買える喜び」「酒をつくれる喜び」「酒が売れる喜び」。毎日これを声にすることで、すべての喜びをもたらしてくれる大自然に感謝しながら、喜びを日々感じられるようモチベーションをあげています。こうした喜びを、スタッフや生産者の方、酒販店さんひいてはお客様と共有いける企業を目指していきたいと思っています。

私は酒造りに携わることで、日本の食文化の素晴らしさを知ることができました。季節感や感性を大切にする和食と日本酒。私の大きな目標は、雪見酒や月見酒など様々なシチュエーションで飲まれてきた日本酒を、「21世紀のお酒」として広めていきたいということです。日本の食文化の良さを、国内だけでなく世界に伝えていける酒を造りつづけていきたいですし、いけると信じています。

Photo Credit : Yoshihiro. Koike

取材後記

ご協力誠にありがとうございました。
たくさんのお話しを伺うだけでなく、お忙しい時間を割いて工場内を丁寧にご案内いただきました。
日本酒の香りが漂う工場内には、先人の知恵を生かした技を現代のスタイルに変えたアイデアが随所にみることができ、「人と機械の棲み分け」とおっしゃった意味がわかりました。
酒造りを始める9月と酒造りを終える6月には、スタッフ揃って直礼(なおらい=神酒をおろしていただく酒宴)をされるという永井酒造様。有志の方たちは近くの滝で禊ぎをされるというお話しからも、スタッフの方の酒造りにかける情熱、大自然への畏敬が伝わってくるようです。
これからも、日本酒の素晴らしさを発信される酒蔵として、ますますのご発展をお祈り申し上げます。